私たちが手本とする団体、
チャイルドヘルプについて

About Childhelp,our role model.

私たちの活動は、アメリカ最大の児童虐待防止と治療の非営利団体「チャイルドヘルプ」をお手本にしています。この団体は、著書『チャイルドヘルプと歩んで』(集英社刊)で詳しく紹介している、非常に歴史ある組織です。

チャイルドヘルプのはじまり

チャイルドヘルプは、1959年に当時ハリウッドで活躍していた若手女優、サラ・オメラとイヴォンヌ・フェダーソンが日本を訪れたことをきっかけに設立されました。

彼女たちは、日本に駐留していたアメリカ兵たちを慰問するため、主に東京を拠点に沖縄や韓国でも歌やダンスを披露していました。この歴史については、著書で詳しく記していますが、ここで少しご紹介しましょう。

彼女たちが東京に滞在していたその年の秋、関東を大きな台風が襲いました。伊勢湾台風です。二人は、停電するホテルの一室で、暴風雨が激しく窓を叩く音を聞きながら夜を過ごしていました。

台風は次の朝には去りましたが、次の日も、その次の日もホテルから一歩も出ることが許されませんでした。なぜならホテルの外は瓦礫や倒木が散乱していて危険な状態。しかも汚泥があふれて、街じゅうが不衛生になり感染症が蔓延する危険があったからです。

四日が経ち、ようやく二人はホテルの外に出てみることにしました。瓦礫や水溜まりを避けながら歩いていくと、強風の被害を受けたような家屋の軒下で、体を寄せ合いうずくまっている子どもたちを見つけました。

二人は「どうしたの?」声をかけます。けれど、英語は通じません……。「きっと、この子たちは、台風の被害で親と離れてしまったんだわ」と思った二人は、自分たちのホテルに子どもたちを連れ帰ります。

ところが……、

この先のお話は、ぜひ著『チャイルドヘルプと歩んで』をお読みいただけると嬉しいです。

若きサラとイヴォンヌ
福音寮の堀内キンと
歌と踊りを教える二人

チャイルドヘルプの歩み

サラとイヴォンヌは、台風の被害のなかで出会った子どもたちが切っ掛けとなり、子どもたちの支援に乗り出しました。

ハリウッドの映画界や音楽会に声をかけ、多くの支援者を募り、アメリカの児童福祉を大きく変えるムーブメントを起こしていきます。

そして、当時「児童虐待」という言葉さえ、あまり知られていなかった時代に、政府に先駆けて被害児童の受け入れ先を建設。まだ、「心的外傷後ストレス障害」や「トラウマ」という言葉さえない時代に、子どもの心のケアの必要性を訴え、アニマルセラピーや、アートセラピー、ミュージックセラピーなど、心理学の世界の発展にも貢献しました。

そして、アメリカに児童虐待に対応するホットラインがなかった時代に、コンピューターシステムを取り入れたホットラインを設置しました。

これは、目撃者による通報のほか、被害を受けている子ども自身が助けを求められることが主な目的でした。

よって、ホットラインは、親が寝静まる夜に助けが求められるように当初から24時間体制。親が家にいる週末に虐待が増えることから365日年中無休で、ホットラインの対応にあたりました。

その後、子どもの『擁護』を基本考えとする『子どもアドボカシーセンター』の設立に尽力します。

『子どもアドボカシーセンター』には、小児科医師、警察官、検察官、児童局職員、フォレンジックインタビュアー(司法面接員)、心理セラピストなどが常勤していて、ワンストップで迅速に救済へと進みます。

その後、二人が設立した子どもアドボカシーセンターは、アメリカでとても深刻な「児童誘拐」「人身売買」、「児童性搾取犯罪組織」「サイバー犯罪」の摘発、子どもの救済のため、FBI(連邦捜査局)と協働。家庭における虐待の事例だけでなく、多くの犯罪からも子どもたちを救い続けています。

現在においても、このチャイルドヘルプが運営するホットラインは、毎年9万件以上の通報・相談に応えています。

チャイルドヘルプの正式設立以来、110万人以上の子どもたちを救い続け、サラとイヴォンヌの功績は、エリザベス女王やローマ教皇など、世界中から高く評価されています。2006年からは、毎年ノーベル平和賞にノミネートされています。

もし、サラとイヴォンヌが、あの台風の被害の最中に、日本の子どもたちと出会っていなかったら、アメリカの児童福祉は大きく遅れていたことでしょう。

それほど、二人の功績は大きかったのです。

ベトナム戦災孤児支援
保護施設の建設
アニマルセラピー
365日24時間ホットライン

チャイルドヘルプの現在の取り組み

チャイルドヘルプは現在、子どもの救済に関わる多くの事業をおこなっていますが、そのなかでも注力しているのが、児童虐待の「予防」です。

これまで、アメリカでも児童虐待の予防を目的とした教育カリキュラムがありませんでした。それまであったのは、「グッドタッチ、バッドタッチ(良い接触、悪い接触)」という性暴力を防止するための簡易的な教育でした。チャイルドヘルプは、全国的にも先駆けて、独自に『児童虐待予防教育』を開発、「スピーク・アップ・ビー・セーフ」という名のカリキュラムで、多くの学校や地域で、予防教育をおこなっています。

「スピーク・アップ・ビー・セーフ」の効果は、アメリカの警察や児童局でも実証されています。

虐待予防教育を受けた子どもたちが、自ら助けを求めるようになり、友だちを心配して相談するようになったのです。

『児童虐待予防教育』は、確実に、潜在化している被害を顕在化させ、また、子ども自身の「自分の安全を守る」意識も育んでいます。

私たちチア・ザ・チルドレンは、このチャイルドヘルプの歴史に敬意をはらい、今も最先端を走りつづけるその姿を模範に、活動して参ります。

本部にて現在の二人
歴史ある救済の扉
おもちゃの寄付が届けられる子どもアドボカシーセンター
アドボカシーの中のプレイルーム
子どもたちのお絵描き