私たちが手本とする団体、チャイルドヘルプについて
About Childhelp,our role model.
私たちの活動は、著『チャイルドヘルプと歩んで』(集英社刊)で紹介しているアメリカ最大の児童虐待防止と治療に専念する非営利団体『チャイルドヘルプ』をお手本としています。
この団体は、1959年、当時若きハリウッド女優であったサラ・オメラとイヴォンヌ・フェダーソンが日本を訪れたことが切っ掛けで設立されました。その歴史については、著にも書かれていますが、ここで少し触れることにしましょう。
前述にもある1959年、サラとイヴォンヌは、日本に駐留するアメリカ兵たちへの慰問として日本に滞在していました。主に東京を拠点に、沖縄や韓国などで歌や踊りを披露していたのです。
その年の秋、関東を伊勢湾台風が襲いました。二人は、停電するホテルの一室で、暴風雨が激しく窓を叩く音を聞きながら一夜を過ごしました。ところが台風が去った次の日も、次の日もホテルから出ることが許されませんでした。なぜなら外は甚大な被害を受けていて、瓦礫や倒木で歩くのも危険な状態、その上、汚泥があふれ出し、街じゅうが不衛生で感染症が蔓延する危険性があったのです。しかし若き二人は、ホテルから出て外を歩きはじめます。どれだけの被害だったのか、自分の目で確かめたかったのです。二人の足元には、まだまだ瓦礫が散乱していて、汚水の臭いに鼻を押さえなければなりませんでした。
ホテルの周辺の角をいくつか曲がり、さて帰ろうとすると、遠くの軒下で肩寄せ合ってうずくまっている子どもたちの姿に目が止ます。「どうしたの?」と声をかけると、子どもたちは涙を浮かべながら、家がなく、親もいないと言うのです。その子どもたちを数えると、11人もいました。大きな子で12歳くらい、小さな子はまだ2歳ほどでした。
台風で家を失い、親が行方不明なのかな? 二人はそう思いました。でも、そうではありませんでした。
この続きはとても長くなるので、ぜひ著『チャイルドヘルプと歩んで』をお読みいただけると嬉しいです。
さて、その子どもたちとの出会いが、後のアメリカ最大の児童虐待予防団体チャイルドヘルプとなるのですが、その団体の活動の歴史を簡単に説明すると、
まだアメリカ政府がさほど「児童虐待」という問題に本腰を入れておらず、市民もまだ認識があまりない時代から活動をはじめ、被虐待児童の保護、トラウマ治療ができる保護施設の設立、アメリカ初のホットラインの設置、子どもアドボカシーセンターの設立など、政府に先んじてアメリカの児童福祉を牽引してきた団体です。
現在でも、チャイルドヘルプが運営するホットラインは、毎年9万件以上の通報・相談を受け、設立以来110万人以上の子どもを救済しています。サラとイヴォンヌの二人がいなければ、アメリカの児童福祉の発展は大きく遅れていただろうとも言われています。その功績は、エリザベス女王やローマ法王をはじめ多くの国々から賞賛され、2006年からは、毎年のようにノーベル平和賞の推薦を受けてノミネートされています。
そのチャイルドヘルプが近年、特に力を入れているのが、『児童虐待予防教育』です。児童虐待予防教育は、加害者、被害者、傍観者をつくらない未来をつくることができます。
サラとイヴォンヌが日本に滞在したことによって生まれたこの団体は、創始から60年以上になります。その歴史と実績に敬意を表し、私たちは小さな歩みでありますが、先人であるチャイルドヘルプをお手本に、より多くの子どもたちの笑顔をつくれるよう、精進していきたいと思っております。
「加害者」、「被害者」、「傍観者」をつくらない未来のために。今後とも当NPOをよろしくお願いいたします。





